先月の某日昼間、インターフォンが鳴った。
「近所で工事をするのでご挨拶に来ました〜」
「あ、そうですか。それはどうも」
「・・・玄関に出てきてもらえますか〜?」
「今手が離せないので、結構ですよ。ちゃんとお聞きしましたから」
「あ、でも〜〜」
「失礼致します」
ガチャリ。。。。
それから数分後。
またしてもピンポーン。
「奥さん奥さん!ボク、さっき挨拶に来た者ですけど大変ですよ!
お宅の屋根のアンテナが大変なことになってます!!」
「はぁ?」
「と、と、とにかく外に出て見てくださいよ!!!!」
ここで仕方なくドアを開ける。
玄関先には20代前半と思しき茶髪の兄ちゃんがふたり。
どちらも作業服のような上下を着ている。
「見てくださいよ!あのアンテナ!!倒れそうですよーー」
「・・・(仕方なく屋根を見る)
」
「このままじゃ大変なことになりますよーー!」
「・・・(北野武のTV番組かい)」
「根っこから折れちゃいますよ!!」
「・・・折れる?アンテナが?」
「もうフラフラじゃないですかっ!あー、こわい
」
「大丈夫よ。どこもフラついてなんかないじゃないの」
「えーー、見えないんですかーーーアレが!!」
「・・・(屋根の上にキリリと立っておるわ)」
「ボク、道具を持ってきてるんでよかったら・・」
「は??アンタが上がるの?うちの屋根に??」
「ついでにやってあげますよーー」
兄ちゃん、もうね、そういうセールスは嫌というほど経験済みなんよ。
一度『ご挨拶』に来て、数分後またやってくる。
近所で工事してるんだけど、アンテナが倒れそうなんで
持ってる道具でちょちょいと直してあげますよー。
あ、ついでに床下なんかものぞいてあげてもいいですよー。
。。。。というパターン。
「うちの屋根にアンタが上れるわけないじゃないの」
「?」
「見てみなさいよ!あの傾斜、カラスだってとまれないのよ。
猫なんかアンタ、初めっからあきらめてるわよ」
「・・・あー、俺プロなんでーーー」
「・・・・・死ぬよ、アンタ。落ちて」
「・・・」
「アンテナが落ちる前にアンタが落ちるっての!!
」
ここで兄ちゃんふたり顔を見合わせる。
「奥さん、そんなに怒らないでくださいよお」
「怒ってないワ!こういう顔なの!
!
なんなのアンタ、人んちのアンテナに文句つけるだけじゃなくて
あたしの顔にまでイチャモンつける気?
」
(※この日アタクシはすっぴんで
しかも昼寝を中断されたので、すこぶる不機嫌でありました)
ふたりは後ずさりしながら帰って行きました。
その翌日、庭で洗濯物を干しておりますと。。
(機嫌よく
フフフーンなんてハミングしながら)
近所のおじさんが家から出てまいりました。
「おっはよーございまーす」
「わはははは」
「なに?なんで笑ってんのおじさん」
「昨日変なセールス来ただろ?リフォーム屋かなんか」
「あー来た来た、なんで?」
「あの兄ちゃんたち言ってたぞー、この辺には怖い奥さんが
住んでるんですねー、って」
「へ?あたしのこと?」
「昨日いじめたんだろ、若い兄ちゃんを。
まあアイツら悪徳業者だろうからいいんだけどさー」
このおじさん、60代の江戸っ子でべらんめぇでしかも強面。
オッカナイという形容がぴったりのおじさんなんです。
ホントは楽しくて穏やかな焼き鳥屋さん
なんですけどね。
「なんでおじさんに愚痴るのよー!」
「よっぽど母ちゃん(アタクシのこと)が怖かったんだろーよ」
「失礼な兄ちゃんたちだなー!」
「俺みてぇな面構えのやつに愚痴るんだから、相当怖かったんだなー、わはははは」
最近、認知症のお年寄りをだまして大金を詐取した・・という
悪徳リフォーム業者がニュースに出ていましたけれど
これもそういう類の輩だったんでしょうねー。
しかも、この悪徳詐欺業者に雇われていたという兄ちゃんが
インタヴューに答えているのを見たら
『狙い目は30〜50代の主婦。
まずご挨拶と言って玄関を開けさせ、気の弱そうなおとなしそうな奥さんだったら
数分後にまた訪問して、アンテナや壁がヤバイ!と言ってびびらせ
親切を装って入り込み、大きな契約をさせる』
とゆーよーな、いわゆるマニュアルトークについて話しておりました。
そうかそうか、そうだったかやっぱり。
少々意地悪を言っても差し支えなかったんだね、ふむふむ。
まあ家を知られてるんで、あまり過激な撃退は出来ないんだけども
たまーに、こういう輩を許せないモードに入っちゃうんだよね。
ま、確かにアタクシは30〜50代の主婦ではあるけどさー。
顔も見ないでマニュアル通りの勧め方をすると
ちっとばかり嫌な思いをするってことを、覚えておくがいーよ>兄ちゃん
※だいたい↓こーんな傾斜の屋根に足場なしに上れるわけないじゃん!